悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています


「おめでとう! お幸せに!」

 周りと一緒に彼女に祝福を送ると、ソフィアは驚いた表情で固まった。

(心配してたって仕方ない。第二王子がダメなら、のんびり実家暮らしをエンジョイしよう)

 看護師として働いていたときは、いつも時間に追われ、丁寧な暮らしなんて夢のまた夢だった。

 今世はいちおう令嬢……つまり貴族のお嬢様なので、自分で何もしなくても、生活ができる。紙とインクもあるので、人を雇って自分好みの薄い本を作って暮らすとか。

(難点があるとすれば、この世界には乙女ゲームがないんだよね)

 アリスがぼんやり今後のことを考えていると、背後から声が聞こえた。

「ねえ、あなた大丈夫? しっかりして!」

 振り返ると、ひとりの令嬢が座り込んでいた。

「どうしたの? ゆっくり横になって」

 まだ若い令嬢は、おそらく魔法学校の生徒だろう。友人らしき令嬢はオロオロとするばかり。

 倒れた令嬢の傍に跪き、症状を確認するアリス。

 令嬢は水の中でもがくように、苦しそうに首や胸をかきむしろうとするので、手首をつかんで傷ができるのを阻止する。

(顔色が悪い。やたら呼吸が早い)

 症状を観察していると、令嬢の体が突然ぴくつき、すぐに大きく跳ねるようにビクビクと震動する。