彼女が微笑んだ瞬間、拍手が沸き起こった。
王子に手を引かれ、ソフィアは舞台に上がる。
拍手はますます大きくなり、ふたりを祝福した。
アリスはごくりと唾を飲み込む。
ゲームならばここでアリスの暗殺計画を暴く王家の家臣が乱入し、断罪イベントが発生する。
緊張してなりゆきを見守っていたが、王子とソフィアの幸せそうな婚約発表は順調に進んだ。
(よかった。無事断罪回避した)
ホッと胸をなで下ろし、舞台を見上げたアリスはドキッとした。
ソフィアが、冷ややかな目で彼女を見て笑っていたのだ。
どうだ。私がアーロン王子に選ばれたんだ。悔しいだろう。
そう言っているような、底意地の悪い笑顔だった。
(おー、女には敵意むき出し。やっぱり嫌いだわ。っていうか、私がいじめてたんだものね。仕方ないか)
ソフィアから王子に、「アリスに嫌がらせをされた」ということを告げ口されることを彼女は恐れる。
王家からの印象が悪くなると、第二王子と近づけなくなるかもしれないからだ。
アリスはソフィアににこりと微笑み返した。
前世で培った、患者家族用の作り笑顔は超一級だったと自負している。



