そこには口を押え、目をまん丸くしている主人公がいる。

 ゲームではプレイヤーが自由に名前を決められる主人公。この世界ではソフィアというデフォルトの名前にされているらしい。

「ソフィア、こちらへ」

 王子に呼ばれても、立ち尽くして動かないソフィア。

 アーロンは舞台から降り、彼女に向かって真っ直ぐに進む。みんなが彼が通る道を自然に開けた。

 ソフィアの前で立ち止まり、彼はハッキリと言う。

「お前が好きだ。俺と結婚してくれ」

 アリスの後ろの方から、きゃああと悲鳴のような声が聞こえた。

 学校にはアーロンの妻の座を狙っていた女子が、山ほどいたのだ。

「わ、私なんかで……いいんでしょうか……」

 震える声で返事をするソフィア。

(彼を狙って好感度上げてきたんだから、さっさとハイって言えばいいのに。謙虚さを演出しているのか? あざとい。嫌いだわー)

 冷めた目で見ているアリスの前で、ふたりは視線を絡め合う。

 やがてぼそぼそと王子が小さな声で話しはじめた。

(そうそう、ラストは主人公のどこを好きになったかとか、長いセリフがあるんだよね)

 ソフィアは顔を赤らめ、指で涙をぬぐう。

「よろしくお願いします」