「どうした」

「そろそろ仮縫いの時間よ」

「ああ、そうか」

 ルークはジョシュアに挨拶し、練兵場から出た。

 輝く金髪から、汗の玉が落ちる。

「まず水浴びをした方がいいわね」

「そうだな。このままでは仕立屋に嫌な顔をされてしまう」

 これから彼らの元には、街の仕立屋が来ることになっている。

 国王の計らいで、ルークたちの結婚式をやり直すことになったのだ。

 真新しい装いをし、兄弟王子たちを呼び、民衆に新婚夫婦のお披露目をし……。

「これからやることが多いわね」

「面倒か?」

「いいえ、まさか」

 アリスの胸は浮き立っていた。

 亜里の頃で言えば、声優ライブの前夜のような高揚感を、彼女は感じていた。

 ふたりはあれから、ゆっくりではあるが徐々に夫婦らしくなってきている。

 ソフィアが見たら、ハンカチを噛んで引き裂くくらい悔しがるだろう。