ルークがいなくなったほんの数分で、疲れ切っていたアリスは眠ってしまっていたのだ。

 いつもの強気な顔はどこへやら、少女のような安心しきった寝顔だった。

 今日こそは、と決意していたルークは途方に暮れる。が、わざわざ起こして無理強いする気にもなれず、諦めてベッドに入った。すると。

「ルーク……」

 耳元でアリスの声がして、どきりと胸が高鳴る。バッと横を見ると、相変わらずかわいい寝顔のアリスが、むにゃむにゃと口元を動かしていた。

「寝言か」

 ルークはアリスの銀色の髪を撫でる。その瞬間、彼女は寝たままにへっと笑った。

 なんだかとても尊いものを見た気分で、彼の胸はかき乱される。

(仕方がない。今日はこれで我慢しよう)

 ルークはそっと、アリスのまだ誰も触れたことがない唇に、自らの唇を合わせた。

 思っていたよりも柔らかい感触に驚くと同時、中毒になりそうだった。

 もう一度そっと唇を合わせ、ルークは優しくアリスを抱き寄せた。