実はこの本、国王から直々に贈られた、「幸せ王族計画」という、結婚してから夫婦が順調に仲良くなり、子孫を残すための指南書なのだった。

 奥手なルークを心配した国王の、親心が詰まった本。その中にはあからさまな挿絵もあり、初心者にとてもわかりやすくなっている。

(見られてしまった……)

 珍しく真っ赤になるルークを、アリスはキョトンと見上げた。

「ねえ、それなんの本? 暗くて見えなかったわ」

「え」

 光の魔法が使えるルークは夜目がきくが、アリスにとって、この部屋は暗闇以外の何物でもない。

「いや何でもないんだ。どうしてこんなところにあったのかなあ。ははっ!」

「変なルーク」

 ルークは慌てて自室に戻り、アリスが背伸びしても届かない書棚の一番上の段にその本をしまった。

「さあ、アリス……」

 大きくなる鼓動を感じつつ見ると、アリスは既にベッドに入っていた。

「まさか」

 そっと近づくと、アリスはまぶたを閉じていた。唇からはすうすうと寝息が聞こえてくる。