今まで辺境の地で独自の成果を上げてこなかったことも、不安要因としてある。

「つまり、もう少し辺境の領主をうまくできるようになってからがいい、と」

「はい」

「そんなことを言っていると、他の王子に継承権を渡してしまうぞ」

 アーロンがごくっと喉を鳴らした。

 当たり前のように自分に渡されるはずだった王冠を、バカにしていた末の異母弟に取られそうになっている彼の心情は、アリスもわからないでもない。

 全員が注目する中、ルークは静かに首を縦に振った。

「それならそれで、仕方ありません」

 彼はアリスに同意を求めるように見つめる。アリスはニッと笑ってうなずいた。

(あなたがそう思うなら、それでいい)

 ソフィアはそんなふたりを、化け物でも見るような目つきで見ていた。

 自ら最高権力を棒に振るなど、彼女にとっては考えられないことなのだろう。

「やれやれ、欲のないやつらだ!」

 呆れ果てる国王の横で、ルークの母がクスクスと笑った。