悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています


 アリスが大声を上げると、ジョシュアの強面がゆっくりと振り返り、ケルトを睨む。その顔を見た者は全員縮み上がるほどの迫力だ。

「なんということだ。洗いざらい話せ」

 ルークが怒りを露わにし、詰問する。

「な、なんのことでしょう。私は何も……」

 誤魔化そうとするケルトに、ジョシュアの横にいた警備隊員が詰め寄ろうとした。

「やめねえか!」

 一喝され、隊員はぴたりと動きを止める。

「もういい。俺が辺境に左遷されると知って、妻の愛が冷めたんだ。それはケルトが居ようがいまいが、関係なかった」

「ジョシュア殿……」

「国王陛下のお言葉を信じることができていたらよかったのだ。俺も、ルーク殿下も」

 彼らはどちらも、国王の言い分を建前として捉え、意地の悪い者の言うことに心を囚われてしまった。

 それが彼らの弱さのせいと言われると、アリスは腑に落ちない。どう考えたって、余計なことを言うやつらが悪い。