二十歳をとっくに過ぎた今でも、幼い子供のように叱られ、アーロンはすっかり小さくなってしまった。
「ジョシュアに同じようなことを言ったのもお前か」
「いいえ、私はアーロン殿下からは何も」
ちーんと沈みこんでいるアーロンに変わり、ジョシュアが答える。
「では、誰が」
「忘れもしません。当時の財務大臣、ケルト氏です」
視線が集まった先にいたケルトは、まだ財務大臣の地位にいる。彼は腰を浮かせかけていた。
「ちょいと御不浄に……」
トイレと偽り、逃走する気満々に見えて、アリスは萎えた。
(この国、ろくな権力者がいないわ。貴族政治ってこんなものなの?)
国王がケルトをひと睨みすると、彼はそろそろと椅子に座りなおした。
「ケルト大臣といえば……数年前に新しい奥方様を迎えられましたね」
ラズロの言葉に、真っ青になるケルト。
「新しい奥方……そういえば、ジョシュアさんは異動前に離縁された奥方がいましたね。その方の再婚相手がケルト大臣だったような気が」
「ええー。じゃあ、大臣が副長の奥方様を狙って、彼を陥れたってこと?」



