アリスは思い出す。新種の未確認ウイルスが亜里の世界を襲ったときのことを。
既存のウイルスより感染力も致死率も低くても、「よくわかっていない点が多い」というだけで人々を恐怖に陥れたのだ。
新たな魔法を持つ王族の誕生は、心の弱い者たちの不安を煽ったのだろう。
「では、警備隊が落ちこぼれの巣……いいえ、個性的なメンバーばかりだった理由は?」
アリスが問うと、国王は答える。
「ルークの統率力を鍛えようと思ってな。結局はうまくいかず、アリスの力に頼ることになってしまったわけだが。ただ先日の事件のとき、ルークの成長をひしひしと感じたぞ」
なるほど。荒くれ者ばかりを送り込んだのは、そういう理由があったのか。
アリスは納得した。
「もしかして、ジョシュア副長は」
彼女がハッと気づいて呟くと、ルークの母がにこりと微笑んだ。
「そう。彼にはルークを守ってもらうため、付き添ってもらったの。この国一番の剣士だったもの」
「元気そうで安心したぞ、ジョシュア」



