悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています


「出立前に母上に会いにいくことも、周りに禁じられました。私はすっかり、お二人に見捨てられたのだと……」

「私が? だから一通も手紙のお返事をくれなかったの?」

 ルークの美しい母がぱちくりと目をしばたかせた。

「違うわよ。あなたがあの地に赴任させられたのは、私の希望だったのよ」

「なんですって」

「あなたは光の魔法が使える。一見それほど役に立たないように見えても、珍しすぎて未確認の要素が多い。よくわからないものを、人は恐れるの」

 母の声は大きくはなかったが、不思議な響きで聞く者の鼓膜を揺さぶる。

「実験であなたの力を解明しようとする者があなたを狙っているという情報をつかみ、田舎に避難させようとしたのよ。言ったわよね?」

「ええ。でもそれは表向きの嘘だと……」

 今度はルークがポカンと口を開けた。

 光の魔法。あの滅菌の光以外にも、彼の力は使い様があるのかもしれない。