ソフィアが唇を噛むのが、正面にいたアリスには見えた。
「お、お待ちください」
ルークや警備隊が高評価を受けているのはわかっていたが、突然王位を譲ると言われても困る。たくさん疑問が残る。
アリスが声を上げると、国王がそちらを見た。
「どうしたかね? 言ってごらん」
「あのう、大変申し上げにくいのですが……陛下はルーク殿下を疎んじていらっしゃったのでは?」
いきなり手のひらを返したような態度は、俄かに信じがたい。
「余が? ルークを?」
本気でキョトンとしているような国王に、アリスは戸惑う。ルークも同様だ。
「五元素の魔法が使えない俺は、王家のはみ出し者だから……だから辺境の地に流されるのだと聞いていたのです」
ルークが立つと、国王は眉を顰めた。
「誰がそんなことを」
「俺が十四歳当時、兄上から」
視線を投げられたアーロンは、すっと顔を横に向けた。後ろめたいことがあるのだろう。
ルークはひとまず突っ込まず、その次を話す。



