悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています


「というわけで、王位継承者を決めておくわけだが」

 アリスはふうとため息を吐いた。五元素の魔法を持たないルークが指名される可能性はほぼない。

 アーロンとソフィアのドヤ顔を見せつけられると思うと、自然に二回目のため息が出た。しかし。

「ルーク、お前でどうかと余は考えている」

 ざわめきが一層大きくなった。

 指名された本人は、オッドアイを見開き、座ったまま固まっている。

「な、なぜルークなのですか?」

 耐えかねたアーロンが口を開いた。

「なぜって。ルークとアリスが、今回の事件の一番の功労者だからだろう。国境警備隊は火の海となった街から市民を避難させ、多くの命を救った」

「それを言うなら、軍隊を率いた私も」

 がたんと椅子を鳴らして立ち上がったアーロンに、国王は鷹揚に笑いかける。

「お前は真っ先に途中退場しておったではないか」

 堪えきれなかったのか、どこかの席から「ブッ」と笑いが噴き出すような音が聞こえた。

「余は今回、ルークとアリスを見ていて、彼らに任せた方が国がうまくいくような気がしたのだ」