悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 国王はソフィアの顔を見た感想は特に言わず、メインの料理を食べ終わるとゆったりと立ち上がる。

 全員が話をするのをやめ、彼の言葉を待った。

「今日は皆に話がある。先のような事件が起こった以上、余はそろそろ引退を考えておる」

 ざわっと部屋の空気が揺らいだ。アリスも驚き、目を丸くする。

「貴族が領民を苦しめているとは知らず、このような事態を引き起こしてしまった。余の目も節穴になったものだ」

 という国王もまだ五十代後半。亜里の世界で言えばまだ老人とは言えない。

 ただ今後もこのような事件が起き、国王の身に何かがあった場合のことを考えると、早々に王位継承者を決めておく必要がある。

 今のところ、王位継承の第一候補はアーロンだ。これは周知の事実である。

 アーロンは「今度こそ自分が主役だ」と言わんばかりに、背筋を伸ばして胸を張った。

 ちなみに騒ぎを起こしたきっかけになった貴族は領地を取り上げられ、田舎に引っ越したらしい。