「傷はどうだ、アーロン」
国王に声をかけられ、アーロンはきりっとした顔を作る。
「もう大丈夫です」
大した怪我でもないのに痛い痛いと騒いで侍医を閉口させたのは誰だったか。
ルークや王子たちはしっかり覚えていたが、トラブルになると面倒臭いのでスルーすることにした。
「王太子妃は、いつまでその湿布を貼っておるのだ」
「まだ、少し痛むもので」
ソフィアは眉を下げて微笑む。健気なふりが上手いと自分で思っているのがアリスには伝わってくる。
「少しなら剥がしてしまえ。花の顔が台無しだぞ」
たしかに、湿布はソフィアの「可哀想感」を増幅させるが、化粧やドレスによる華やかさを軽減させていた。
国王に剥がせと言われれば、ソフィアも拒否はできない。
ゆっくりと剥がした湿布の内側の頬には、傷も痣も残っていなかった。
「やっぱり、どうにもなってないじゃないか」
ルークが呟いた声が聞こえたのか、ソフィアが周りにはわからないように目だけで彼を睨んだ。



