亜里の視界が、浮かんできた涙でぼやけた。

 大事なゲーム機の画面に、雫が落ちる。

(生まれつき綺麗で、仕事もできて、ハイスペックな医者と結婚するだと? 羨むなって思う方が無理じゃないか)

 今までは、仕事が忙しいから出会いがないと言い訳してきたけど、オタイベントで同じ趣味の男性に出会ったことは一度や二度でない。

 けれど誰とも恋愛関係に発達しなかったのは、自分の魅力とコミュニケーション能力不足だと亜里はわかっていた。

 同じ仕事をしていても、結婚して子育てをしている人もたくさんいる。

(どうして私はそうじゃないのか)

 四十を越えても結婚していない人、結婚しても離婚した人もいる。

 みんな、仕事を頑張って、趣味を楽しんでいる。

(しかし正直、どちらが羨ましいかと言えば……私は、結婚している人たちが羨ましい)

 亜里が乙女ゲームばかりするのは、愛されたいという欲求が人一倍強いからだ。

(私だって、愛されたい。幸せになりたい)

 現実では叶わない願いを、ゲームの主人公が叶えてくれる。

(しょうがない。いくらさみしくても、孤独でも、今すぐどうにかできるもんじゃない)