彼女は静かに、ルークとアリスに微笑みを投げた。
「さあ、食事を始めよう」
国王の命令が出ると同時、メイドたちが温かい料理と冷えた飲み物を運んできた。
「警備隊の面々は酒を飲まないのだったな」
にこりと笑った国王に、アリスも微笑みで返す。和やかな雰囲気で始まった食事会の中、アーロン夫妻だけはモヤモヤとしていた。
どうして王妃であるアーロンの母ではなく、側室のルークの母が国王の横に座っているのか。気になって仕方がないようだった。
「この度は事件の鎮圧と収拾、ご苦労だった。乾杯」
出席者が杯を掲げる。アリスはその中で、憮然とした表情をしている者を何人か見つけた。
死者を出した事件の後だ。大々的な宴会ではないにしろ、この時期に食事会を催すことを苦々しく思っている者もいるのかもしれない。
警備隊のジョシュアもその一人だ。「副長が出席したくないとゴネている」と、アリスが着替える間に隊員から報告があった。もっとも、彼は自分が国王に左遷された恨みを忘れていないからかもしれないが。



