悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています


「次!」

 自分の無力さに打ちひしがれている場合ではない。やれることをやるだけだ。

(とにかく、命だけは守る)

 頭がパックリ裂けた子供の横で、母親が涙を流している。

「こんなに血が出てしまって。もうダメでしょうか」

「頭は血管がいっぱいあるから、出血が多いものよ。あきらめないで」

 アリスは患部を圧迫し止血をしながら、血だらけの皮膚のその下を透かし見る。

 爆発による建物の破片で切ったのだろう。皮膚は裂けていたが、骨や脳には影響なさそうだ。

 アリスは安堵し、麻酔を打ってから皮膚を縫合針と糸で縫った。処置が終わったら痛み止めを母親に手渡す。

「坊や、もう大丈夫よ。次!」

 次、と言っても患者がストレッチャーで運ばれてくるわけではないので、アリス自ら移動し、大腿部を骨折した男性の横に跪く。

「いてえよお、いてええええ」

「それだけ叫べれば大丈夫! 元気だわ!」

 腫れあがっている箇所を透視すると、太い骨がぽっきりと折れていた。