ソフィアがアーロンに選ばれたことに疑問を抱いている者は、アリス以外にもいるようだ。

 令嬢たちのそういった悪口は、アリスには負け犬の遠吠えにしか聞こえない。

(前は私が率先してああいうことをしてたのよね。恥ずかしいわ)

 世間話に巻き込まれないよう、ひたすら食べていると、ふと壁際で一人きりでいる令嬢に気づいた。

 ミントグリーンのドレスを着た彼女は、小さなバッグからとりだした何かをつまみ、口に入れた。と思えば、ろくに噛まずに酒と一緒に飲みこむ。

(変なひと。家から持ってきたお菓子じゃなく、出された料理を食べればいいのに。もしや、ダイエット中とか?)

 気になったのでカップケーキを食べながら見ていると、令嬢は次から次に粒状の何かを口に入れる。

(なんだろう。豆? それとも砂糖菓子?)

 異様な光景なのに、誰も何とも言わない。

 周りは酒に酔い、舞台で催される踊りや歌、手品に夢中だ。

(もう二十粒はいきそう。なんだか顔色が悪いわ)

 気になりすぎて、カップケーキの味がわからなくなってきた。

 アリスは食べかけのそれを持ったまま、話しかけてみようと令嬢に近づく。