結婚式の最中、アリスはひたすらボーっとしていた。真剣に祝う気など、毛頭なかった。

 広間は招待された王族や貴族で溢れかえっており、むっとした熱気に包まれている。

(誰も熱中症にならないといいけど……)

 扇で首元を仰ぎながら、退屈な式に耐えた。

 よく周りを見れば、同じように退屈そうにしている者は何人かいた。

「お妃様のドレス、似合ってなくない?」

「しっ。首が飛ぶわよっ」

 アリスの隣に座った貴族の姉妹らしきふたりが、コソコソと話している。

(激しく同意だわ。庶民から王子の妃になるシンデレラは大変ね)

 そう思うアリスも前世では、シンデレラストーリーに憧れていた。

 例えば、普通の栄養士が外科医と結婚するとか。

 しかし今、ハリボテみたいなドレスを着せられたソフィアを見ると、怒りよりも哀れみが湧いてくる。

(あの子はこれから幸せになれるのかしら)

 アリスは最初、ルークとの結婚に不満ばかりだった。

 あっさり終わった神父と隊員しかいない結婚式も、メイドがいないことも。