ははと笑った能天気なアーロンの後ろについていきながら、ソフィアは小さく舌打ちした。

(どうしてよ。顔だけの貧乏王子と幸せそうにしやがって、あの女)

 こんなはずではなかった。王子とはもっと険悪な雰囲気で……いや、辺境の地で絶望に打ちひしがれて自害でもしていればよかったのに。

 腕を絡ませ、幸せそうに笑うふたりを思い出すと、ソフィアは叫び出しそうになる。

 ダメなのだ。アリスが自分と同等に幸せではいけないのだ。

 魔法学校卒業生のなかで、自分が一番幸せでなければならないのだ。

(まあいいわ。今日で、どれだけ自分が惨めか思い知るでしょう。絶望しなさい、アリス)

 深呼吸をして心を落ち着かせようとするソフィアを見ても、アーロンは「緊張していてかわいいなあ」としか思わなかった。