誰が城の花壇を荒らすと言うのだろう。拳だけでは足らず、アリスは奥歯を噛みしめて怒りに耐える。
「そうか、仕方ない。ルーク、ソフィアの希望を聞いてはくれまいか」
尊大な態度で、ルークに命じるアーロン。こいつが推しでなくてよかったと、アリスは思った。
「御意」
ルークは短く返事をし、マントを翻す。
「ルーク!」
アリスは咄嗟にマントの端を掴んで彼を止めた。
振り返ったルークは、無表情でアリスを見返した。
「俺は隊に指示を出さなければならない。式には君だけ参列してくれ」
「私も行くわ。軍服を着て、みんなと一緒にいる」
これだけバカにされて、黙って参列できるものか。
ムキになって大声を上げるアリスの肩を、ルークが優しく叩いた。
「君にはドレスの方が似合う。おふたりのご様子を、あとで俺たちに伝えてくれ」
見つめられたアリスは、ぐっと唇を噛んだ。
バカにされても、お互いにやるべきことをやろうと、彼は言っているのだ。
彼は馬鹿らしい命令に荒れ狂うであろう警備隊を宥めつつ、形だけの警備をしなくてはならない。