彼は以前よりずっと健康に見える。髪を短く切りそろえ、髭は綺麗に剃られている。顔は血色を取り戻し、体は引き締まっていた。

「ぴったりです」

「そうか……」

 一瞬の沈黙が落ちた。彼女は勇気を振り絞り、話しかける。

「最近はいらっしゃらないから、もしかしてお身体に何かあったのではないかと、心配しておりました」

「ああ。あの腹だったから、苦しくて歩けなくなってな。王太子妃に叱られて、真面目に療養したんだ」

 ジョシュアは事実をそのまま話はしなかった。吐血したなどと言えば、引かれるかもしれないと思ったからだ。

「まあ、お妃様が。私はてっきり、素敵な奥方様でももらわれたのかと」

 彼の酒浸りだった生活を整えてくれる誰かがいるのかもと思った彼女の言葉に、ジョシュアは盛大に咳き込んだ。

 地域住民にとって目障りでしかなかった城の警備隊は、嫁いできた妃の改革により、一般常識を取り戻しつつある。

 そのような噂を、彼女は思い出した。