亜里は心の中で指摘する。
(いや、あんた栄養計算するだけじゃん。作ったのは調理員じゃん)
妖艶とも思える視線で誘われた佐藤さんは、皐月が向けたスプーンを口に入れた。
「わあ、とっても上手!」
大げさにおだてられた佐藤さんは、ごくりと薬入りプリンを飲み込んだ。
しかし、その後は口を開こうとしなかった。が。
「ええ、もう終わり? もう少し私とお食事しましょうよ」
隣に座った皐月に肩をなでられると、佐藤さんはぱっかーんと大きく口を開いた。
なんと皐月は次々に食事を彼の口に入れ、完食させてしまった。
「すごっ。この人マジで手が焼けるんですよ。毎日来てくださいよ」
通りすがった後輩看護師が空になった食器を見て驚く。
「毎日はちょっとね~。亜里、あとマウスケアよろしくね」
「え、ああ……佐藤さん、私とぶくぶくぺっしない?」
入れ歯を外してうがいをさせようとするけど、亜里の誘いは断固拒否の佐藤さん。
「なによー。皐月が綺麗だからって。私だって佐藤さんの看護一生懸命やってるのに。ひどくない?」
亜里は嫌がる佐藤さんの口をこじ開け、入れ歯を外させた。
再び叫び出した彼は、後輩に個室に戻されていった。
「亜里は男の扱いがわかってないね」
クスクスと笑う皐月。



