案の定…約束に一時間遅れて聡が来た。

黙って私の前に座り
ママさんが水とおしぼりを持ってくる。

「ポテトグラタンセット…」メニューも見ないで
注文する。

聡は黙ったままだ。

「どうしたぁ?元気ないじゃん。」

「…」

「今日は 現場遠かったの?」

「…」

呼び出しておいてそりゃないよ…聡…

ジュークボックスの音だけが店に響いていた。


グラタンなんぞ オーダーするもんだから
ちっとも出でこやしない。

もう声をかける気力もなく
お互い 黙ったまま その辺に有った漫画をペラペラめくる。

内容なんて見ちゃいない…

『おまたせ~~』少し甲高いママさんの声…
熱々のグラタンが運ばれてきた。

押し黙った二人の真ん中に ホカホカのグラタン…
変なの…って思いながら 見つめていた。