「少し、お腹空いたね。」

智くんが 照れたように言う。
 

「そうめんならすぐにできるわ。」

と母が答える。

立ち上がる母と麻有ちゃんに 絵里加と恭子が 湯呑を下げて従う。

お祖母様も静かに微笑んで、
 

「さすがに今日は お鮨ってわけにいかないからね お祖父ちゃん置いて。」と言う。
 
「お祖父様、外食が好きだったからね。」

と翔が言うと、お祖母様は笑顔で首を振り

「お祖母ちゃんが、料理嫌いだったから。」

と言った。


そして、ダイニングから顔を出した母に、
 
「沙織ちゃんもね。」と言う。
 
「用意できたわよ。」と言う母を 樹達が笑って見つめると、
 

「悪口 言っていたんでしょう、私の。」

と母が言い みんなが笑顔になる。

少し寂しい、控えめな笑顔だけど。