唐突に浮かんだ“好き”という気持ちは、パズルの最後の1つのピースをはめたようにしっくりときて、私は文野くんのことが好きなんだと実感した。
*
懐かしいこの思い出は私がこの公園に足を運ぶ確かな理由だった。
相変わらず私が文野くんに憧れてることも、ましてや好きだなんて誰にも言えない。
1年前、私は確かに走ることが大好きだった。
……今は苦しくてたまらない。
「……どうしたら楽になれるんだろう」
呟いた言葉は誰にも届かず空中にとける。
私は家に帰るためベンチから立ち上がった。
「痛っ……」
少し、頭が痛い。
ズキズキと痛みが襲ってくる。
またベンチに座る。
目をつむり頭の痛みが引くのを待つ。
5分くらい経って頭痛が治まり、私は恐る恐る立ち上がる。
今度は痛みが襲ってくることはなかった。
そのことに少しホッとして、ベンチの近くにある桜の木を見た。
すでに大部分の花びらが散っている桜の木は少しだけ寂しい印象で……
私の恋はいつか咲くことができるかな?
……なんて。
私は自嘲気味に笑う。
そもそもまず部活のことをどうにかしなきゃいけないのに……
それに文野くんはみんなの人気者。
対する私は部活が同じだけの本来なら関わるはずもない地味な存在。
私は公園を出て帰路につく。
この初恋はきっと咲かないままいつか思い出になっていくのだろう。