「それで文野くんが楽しそうなだけじゃなくて綺麗なフォームで真剣に走ってるところとか憧れてたんだ!」
「……っ!?ありがとな」
口元を手で覆い隠すようにして視線を逸らした文野くん。
……なんだか恥ずかしそう?
そう思ったとき、ふと自分の発言を思い出した。
その途端、カァッと顔に熱が集まるのがわかる。
……どうしよう……本人目の前に憧れてるとか言っちゃった。
恋なのかもわからないこれは、なんだか気恥ずかしくてまだ誰にも言ったことのない。
だからこの感情は自分の心の中にしまっておくはずだった……
……なのに、
なんて自分でも呆れているとザァッと一際強い風が吹いた。
それとともに私の髪も風になびく。
「あ、」
風が止み、文野くんが私の方を見ると何かに気づいたように声を発した。
「伏見、ちょっとじっとしてて?」
と、文野くんはそのまま私の方に手をのばす。
思わずギュッと固く目をつむると、暖かい文野くんの手が私の髪を触る。
「はい、取れた」
文野くんのいつもよりやわらかい声が聞こえ、そっと目を開ける。
「桜の、花びら……?」
「そ。さっき伏見の頭にこれがついてたから」
文野くんは小さなピンクの花びらを摘んでやわらかく笑う。
文野くんの微笑みと共に触れた手を思い出して、また顔が熱くなる。
……好きだなぁ