好きという名の幸せをあなたに。





1年前の春休み。


まだ桜が満開だったその日も私はこの公園に来ていた。


部活をサボっていたのではなく部活終わりに公園に寄ってベンチに座ってぼーっとしていたのだ。


この時間が私はたまらなく好きで………


「あれ、伏見?」


聞き覚えのある声に名前を呼ばれ私は思わず顔をあげた。


「…文野くん!?」


私の名前を呼んだのは入部当時から憧れていた陸上部のエース、文野龍哉くんだった。


思わず声をあげてしまった私の方へ文野くんは駆け寄って来てくれる。


「伏見、なんでここにいるんだ?」


もう帰ったのかと思った!と笑う文野くんに私はつい俯きがちになる。


「伏見?」


「……えっと、ここ、お気に入りの場所で……その、よく練習終わった後とかにここによく来るから?」


あ、あれ?ちゃんと答えられているよね?


なんて頭の中でぐるぐる考えていると「なんで疑問系なんだよ」と文野くんにツッコまれる。


コミュ障なんです!!なのにいきなり目の前に憧れの人現れて会話することになったらそりゃ疑問形にもなります。


なんて言えるはずもなく


「えっと、なんとなく?」


という言葉でその場を(一応)凌いだ。


「なにそれ、なぁ隣座っていい?」


「へ?う、うん、いいよ」


ちょっとズレると隣に文野くんが座る。


いつもよりも断然に近いその距離にドキドキと鼓動が高鳴る。