「伏見!」
大好きな声に呼ばれる。
私は、ゆっくりと声がする方向に振り向いた。
「……ふ、文野くん、平山くんも今日も来てくれたんだ。ありがとう。」
私は振り返り、緊張しながらも無愛想にならないように言葉をつむぐ。
「伏見、この本読み終わったよ。面白かった!」
「そっか!」
文野くんのはしゃいだような嬉しそうな声に私も嬉しくなり笑顔になる。
「………っ」
「伏見さん、俺にも面白い本オススメしてくれてありがとう。それでよかったらまたオススメ聞きたいんだけどいいかな?」
なぜか喋らなくなってしまった文野くんの代わりに平山くんが話しかけてくれる。
「もちろんいいけど、その、文野くん大丈夫?」
「ぜ、全然大丈夫!だから伏見さえよかったらオススメ教えて欲しい!」
「それならよかった。じゃあオススメの本教えるね!」
復活(?)した文野くんも教えて欲しいと言ってくれたので、私は彼らまたオススメの本を教えることになった。
こうして文野くんと陸上以外のことで喋ることができるし、こういうときは陸上以外の趣味があって本当によかったと思う。
と、言っても今日私が2人にオススメしようと思っている本は陸上部の男の子が主人公の物語なんだけど。
「あった!この本が2人にオススメしたい本だよ」
私は文野くんと平山くんにそれぞれ本を渡してオススメポイントを話していった。


