楓彩る頃思ふ





新道「此奴の説明だけじゃよく分かんねぇだろ」

天馬「ええ、何ですかその言い方?僕に説明させてるのは先生じゃないですか」

新道「元々説明が上手いのは俺でもお前でもないだろ…」



呆れたように溜息を吐いている先生を見ていると、天馬くんにいつも苦労しているんだろうなぁ…と同情してしまう。

だが、それとこれとは話が別だ。



『お断りさせていただきます』

天馬「何で?」



…こんなことを言えば、面倒なことになってしまうかもしれない。

でも、言わなければきっとこの人はしつこく言ってくることだろう…。

そう思ったため、彼らの方を見据えながら私は言葉を口にする。



『…私は幽霊とか、そう言った類のものは信じていないんです。信じる必要性が分からない。下らない、馬鹿馬鹿しい。そう思っているんです。だからそんなことのために時間を費やすくらいならば、もっと他のことに使いたい。だから、お断りさせていただきます』



面白さの欠片もない発言をしたことは知っている。

それでも、私はこの人達に巻き込まれたくないと思ったのだ。



天馬「ふーん…でも君、協力した方が良いと思うよ?」

『何故ですか』

天馬「何故…って、ねぇ?先生、」

新道「嗚呼…まあ、その方が良いだろうな」



二人で意思疎通をしながらそんなことを言ってくるが、私には理解の出来ないことである。

何なのか、と思いながら二人を見ていれば、二人は目を合わせた後私の方をまた見てくる。



天馬「君、好かれやすいみたいだから」

『…好かれやすい?何に?』



そう聞けば、くすりと笑みを零したあと…私を見つめながら、彼は言う。



天馬「人間ならざる者に」



嗚呼、意味が分からない。



『そんなことないと思いますよ』

天馬「あるよ?君だって分かってるよね」



…分からない、分かるはずがない。

分かりたいとも、思わない。



天馬「君、幽霊とか…そう言うもの、視えるんじゃない?」



彼から言われたその言葉に、視線を落としながら黙り込む。

視える人には、視える人が分かるのか。

だとしても。



『…視えません』



私はそう答える。

嘘ではなく、本当の話だから。