『…私、何かしましたか?』



放課後、全員帰ったにも関わらず、始業式から先生に呼び出しを食らった私は二人になった途端そう先生に問い掛けた。

そうすれば、名簿なのか何なのか…手に持ったものを見ていた先生は、私の方を見て頭を掻く。



新道「ちょっと待ってくれ、彼奴が来ねえと話になんねえからな…」

『彼奴?』

新道「もう他の奴は帰ったよな」



教室の外を見て、もう誰も居ないことを確認している様子の新道先生。

誰かに聞かれてはまずいような話なのだろうか、私はそんなにもしてはいけないことをしてしまったのだろうか。

不安になっていると、教室の外を見ていた先生は溜息を吐く。



新道「おい遅えぞ蒼司、何してたんだ」

「すみません、昼寝してたらいつの間にかこんな時間に」

新道「呼ぶように言ったのはお前のくせして昼寝してたってのか?」



怒ったようにそう言う先生と、それに返事をしている“そうじ”と言う人。

どうしたのかと思い見ていると…先生と話をしていたその人は、中へと入って来た。



『…え、うわ』

「うわって酷いなぁ…」

新道「…お前、何かしたのか?」

「人聞き悪いなぁ、今朝少し話をしただけですよ」



入って来たその人は、今朝の桜の木の下に居た青年だった。

制服なのは見て分かったし、生徒なのも気付いていた…が、もう二度と会いたくないと思っていたのに。



天馬「改めまして…僕は天馬蒼司(てんまそうじ)、隣のクラスだよ。よろしくね、…城崎さん?」

『…名前…』

天馬「知ってたよ、昨年同じ委員会だったんだけど…もしかして覚えてない?」



…同じ委員会?

私は委員会には所属していたし、しっかりと当番活動だってしていた。

だが、天馬蒼司なんて人…関わったこともない気がする。

そもそも、委員会の仕事をしっかりとしている人なんて私くらいしかいなかったはず…



天馬「って言っても、僕色々忙しくて殆ど仕事とかしてなかったけどね」

新道「何が忙しくて、だ。殆ど他の奴に任せているくせして…」

天馬「えー、何のことですか?」

新道「てめえなぁ…」



先生をおちょくるようにそう言ってはくすくすと笑う天馬くん。

そんな風に、怖いと言われている新道先生をおちょくれるなんて…きっと只者じゃないな。

そんなことを思いながらも、気になっていた質問をする。



『それで…私に何の用ですか?』

天馬「嗚呼、そうそう」



そう言った天馬くんは、少しだけ笑みを浮かべながら…言った。



天馬「ねぇ、君…協力してよ。僕達に」