新道「今年このクラスの担任になる新道慧(しんどうさとし)だ。一年間よろしくな」



まるでフラグ回収とでも言うように、そう挨拶をする新道先生。

生徒指導の教師であり、歴史の教師でもある新道先生は厳しいことで有名であり、それこそ工藤さんのようなギャルからすれば天敵のような相手であるはず。

可哀想に、とは思うが同情する気はない。

文句を言われたくなければ、髪を染めるのもパーマをかけるのも辞めれば良いだけの話なのだから。

なんて、もし友人が居てこれを言っていれば、冷めていると言われていたに違いないのだが。



新道「取り敢えず式の後の話だが…」



そう言い出す先生の言葉を半分流しながら、窓の外へと目を向ける。

私の席は窓際であった。

“し”ろさきであると言うのに窓際なのだな、とは思ったが、出来るものならばそうでありたかったため好都合ではある。

窓の外を見ていても、ある程度なら文句を言われないのはありがたい話だ。

…今日は空が綺麗だ、快晴だ。

本当に綺麗だ、と笑みを浮かべていれば、先生が話し終えたことが分かる。



新道「まず始業式だ、その後に学級委員長を決めるからな。希望者が居たら早めに終わらせられることだけ分かっておけよ」



学級委員長か、きっと雪菜さんがやるに違いない。

他の人がやる気がなければやる、と言った人なのはよく知っているから。



新道「それと………城崎」

『…え?』

新道「お前は放課後残れ、話があるからな」



…始業式初日から、私が一体何をしたと言うのか。

周りに驚きと困惑と、好奇が混ざった瞳を向けられて吐きそうだ。

目立ちたくない私が一体何をしたと言うのだろう、勘弁して欲しいものだ。



新道「返事は」

『…はい』



大きく溜息を吐きたくなったが、これ以上あの目を向けられるのは嫌だ。

そう思ったため、しっかりとそう返事をすれば先生は他へと話を進める。

何故こうなるのか、考えるだけで頭が痛くなるが…何かした覚えはないため、怒られるわけではないと思い思考を他へと向けることにする。



『…はあ』



…だが、小さな溜息くらいは許して欲しい。