優香はそっと
ティシャツの襟元から自分の
胸元を覗き見る。
ドット柄のブルーのブラ。
ストラップやカップにフリル付き。
買ってしまった…。
かわいい?
かわいすぎ?
………。
翔輝がバスルームから出てきた。
着替えがない優香に用意してくれた
翔輝のティシャツと短パン。
ブカブカのその服の中で
生地が触れる優香の肌が
心もとなさを助長する。
だって、優香の頭の中は
脱オカン。
けど…
もう考えすぎ。
わかんなくなってきた。
若い格好するとか、喋り方するとか
そういうことじゃないんだよね。
それしたら ただのイタイやつだし。
おせっかいしない
世話やかないとか?
そんな感じ?
むむー。
コーヒーを入れて、翔輝がくつろぐ
ソファに戻る。
え。
コーヒーはいいよね?
やだ。ほんと
線引きも何もわからなくなってる。
うううー。
眉を寄せてる優香。
知らず知らず翔輝をガン見してた。
「ん?」
翔輝が気付く。
「べ、別に。何も」
慌てて目を逸らす。
「何だよ」
「何もないよっ」
誤魔化すのがヘタすぎる優香。
ヒョイって。
翔輝の腕が優香の腰を抱える。
「ひゃっ」
ポン。
軽々優香は翔輝の膝の上。
「言えよ」
くちびるを曲げて、反抗しそうになる
優香。
いや。ここで意地張ってどうする
「あたしって…」
言葉が続かない優香。
「なに?」
翔輝が優しい声で
聞くから
「いや。あたしって
ちょっと、オカンぽかったりする?」
ああー聞いてしまった。
「?
何で。
何か言われた?」
笑って翔輝が言う。
「いや。何か…
気になっちゃって…」
翔輝がソファに頭を預けて
「オカンねえ…」
翔輝の中のオカン像ブリーズ!
なんて思った優香に
「わかんねえな。
おれいねえし。」
え?
「ガキんときに、出てったっきりだから」
淡々と
「顔も、何も…覚えてねえしなぁ」
ほんと淡々と何でも無いことのように
言う翔輝。
「なんでそんな顔してんだよ」
優香の表情に気づいて
そんな風に笑うから
優香は
優香は翔輝を抱きしめた。
守るみたいに抱きしめるから
「何、慰めてくれてんの」
「うん」
優香がギュって抱きしめる。
「こういうとこが、オカンっぽいんじゃ
ねえの?」
翔輝が少しふざけて言う。
「…うん」
優香はもっと抱きしめる。
ギュ、ギュギュって。
「それ以上近づけねえって」
翔輝が笑う。
オカンでいいよ。
翔輝が少しでもあたたかくなるなら
オカンで全然いいよ。
「別に、おれは大丈夫だよ。
ただの昔の話だし。」
軽く話す翔輝に
それでも情けなく眉毛を下げてる優香に
「何か、今は
おれは、お前がいればそれでいいや」




