去年か?



幹部会で



口火を切ったのはコイツ。




大輝だった。



「ちょっと、いいですか?」



そうやって大輝は話し出した。



聞いていた那智が言った。



「それは、英次さん(青龍会の傘下)から



外れるってことか?



いや、違うな。



うちは別に青龍会の傘下だった訳じゃない。



懇意で、仕事を受けてただけだ。



英次さんのおかげでな。



でも、その話は違う。



本格的にフロントになるってことだろ。



大輝、お前マジで言ってんのか?」



室内の空気がピリつく。



緊張したツラ構えの大輝が言う。



「そりゃ、今までと違って



汚え仕事も出てくると思う。



だけど、資金源が莫大に大きくなるんすよ。



うちがやらなきゃ、他がやるだけだ。



おれは、今



乗る話だと思うんす…」





みんなの視線が黙ったままの翔輝に集中する。




興味なさそうに聞いてた翔輝が




「いいよ」




軽い口調で言う。




那智が




「翔輝!」



って言うのと、



大輝がほっとしたように



笑みをつくったのは同時だった。




「大輝。



お前が頭やれ。」



翔輝が言った。



は?



幹部会のメンバーがざわつく。



「俺は抜ける。」



翔輝が何でもないことのように言った。




「…反対だってことですか。」



大輝が言った。



「お前のやり方がここ(チーム)のカラーに



あってるなら。



それでいいんじゃね。



ただ、おれには向いてない。



それだけだ。」



もともとブラアイのメンバーは



幹部はもとより



みんな翔輝に惹かれて



集まってきたようなもんだ。



翔輝がいなければ、誰もついてくるはずない。





結局話はそこまでだった。



だけど、翔輝は本気で捨てる気だった。



未練も何にもなく



簡単に




あいつにとってブラアイのトップって



立場はそれくらいのもんだ。




そこらの不良が何やってでも欲しがる



その地位も



アイツにとっては…



ま、そんな翔輝だから…





「那智さーん




おれ考えられないっすよー」



大輝の泣き言で、那智の物思いは



途切れた。




「うるせーな」





そういえば、あん時も



「おれはただ、ブラアイのためを思った




だけなんすよー」




幹部会のあと



酔っ払って、大輝は叫んでたな。