さよならが言えなくなるその前に



「ふうん。


レミ。



お前覚悟あんの?」



那智さんが言う。






覚悟?



那智さんがレミを身体ごと引き寄せて



那智さんの目がレミのまん前。



「お前ひとりで


おれの相手してくれんの?」



ドキ。



どういう…意味?



那智さん…



レミだけのものに



なってくれるってこと?


ほんとに?


他の女としたりしないってこと?



そういう…意味?



レミの心臓はドキドキ音を立てる。



「ほ、他の女のひととしないってこと?



レミだけ?」



レミが聞く。



「それで泣いてんだろ?」



那智さんが問いかけるみたいに



レミの顔を覗き込む。



ガバっ。


レミがすごい勢いで那智に抱きついた。


ガタンっ。



イスがひっくり返りそうになるほどの勢い。


「わっ。おま。


いてっ。痛えって。ちょっと待て。


落ち着けっ」


そんな那智の声も無視して



「ぜったいだよっ。


那智さんっ。うそついたらダメだよっ」




しがみつくみたいに抱きついて言う




レミの声。



「おれはしょうもないうそは



つか無え」



そう言って



嬉しくてしょうがないみたいな顔の



レミを見て




那智が



フッって笑って



「よろしく頼むわ」



って、そう言った。