スルって、
その男の子が、玄関に入ってきた。
「あ、あの。何ですか」
焦って声が上ずる優香。
「ど、どなたですか」
喋ってれば大丈夫と思っているみたいに
優香は喋り続ける。
や、やばいよね。
絶対、これ以上は入れられない。
玄関死守!
男の子は無言。
フードと長めの前髪に隠れた
目が少し見えた。
ドキ。
黒目の中の虹彩がブラウンががっていて
少し暗めの、キレイなはしばみ色?
いや、何ドキって。
この子、目が隠れているし、
無表情というか
何考えているか全然読めない。
「ちょ、ちょっと」
言う間もなく、
その子が靴脱いで、上がろうとしている。
じわって嫌な汗が出てきた気がする。
「ちょっっと!」
その時。
ドキンって
違う意味で気づく。
この子、もしかして…
駅でのヤンキーの仲間じゃない?
ゾワって肌が寒気だつ。
確かじゃないけど、
この子いなかった?
あの子たちの服装こんな感じだったし。
嘘でしょ。
家までつけてきたってこと?
いや、違うか。
だって、何でフルネーム知っているの。
表札だってだしてないのに。
え。ほんと。
この人、誰なの?
何でわたしを知ってるの?
って上がらないでー。




