帰り道。




話がはずんで、お酒が美味しくて




ちょっと飲みすぎたかな。




でも、いいや。




すごい、気持ちがいいもん。




はー。



少しだけおぼつかない足どりで




帰る優香。



ほんと、強がりじゃなくて



元気なんだよね…



これってやっぱり



あいつのおかげ



だよね。



突然で勝手で強引で…



だけど…





ブォン。



大きな排気音がしたと思ったら



優香の真横で車がとまる。



…いや、こういうのはほんと困るんだけだね。



運転席から顔を出したのは



ゆうじくん。



「…乗ってください。



送ります」



ゆうじくん、ひとり?



「いや、いいよ。いいよ。



歩いて帰れるよ。



何で、ここに?」



優香はそう言いながらも、



ちょっと足がふらつく。



結局、優香は車の後部座席。




ゆうじくんがチラって



優香をミラー越しに見る。



「…酔ってるんすか?」



「うん。ちょっとね」



手で顔をあおぎながら優香が答える。



ああ、ほわほわする。



そういえば。



優香が運転席に少し身を乗り出す。



「この前のケガ



大丈夫?」




キキーっ。




ゆうじが急に車を路肩に寄せてとめた。



なに、なに?




優香はビックリして、心臓がドキドキ。



ゆうじがバッ、って振り返る。



「あん時は…その、



ありがとう、ございました!



何か、いろいろ、いろいろ



助けてもらったのに、



おれ、お礼もちゃんと言ってねーし。



だからおれ



…なんか、何かあれば



おれ、するんで…」



たどたどしく、言葉を口にするゆうじ。




「…それで、今日待ってたの?」



〝借り″を返さなきゃ、みたいな?




「あの、そう思ってくれたのは



うん。



ほんと、嬉しいけど。



大丈夫だよ。



ほら、わたしが勝手にしたことだし。




わたしに何かしないと、



なんて、思わなくても



ゆうじくんが、今ありがとうって



言ってくれたので、ちゃんと




伝わったよ。




嬉しかったよ。




だから、そんな気にしないで」



優香がゆっくり伝える。




「ゆうじくん。いい子だね」




オカンみたいって言われたことは



忘れてないけどね。



優香は心で思って



ハッ。



やっぱり、またオカンみたいだった!?



〝いい子″なんて。




なんて、返事していいか



迷ってるみたいな表情のゆうじ。




結局




「…ざっす」って




顔を赤くして言った。



なんか、ほんと



かわいいよね。




格好とか派手なのに、擦れてないって





いうか…




ゆうじの携帯が鳴る。




「はい。



はい。




え、今からっすか。



ちょっと、あーはい。いや



もうちょっとかかるっす。



いや」




優香が小声で言う。




「いいよ。わたし、そこで降りるよ」



ゆうじが優香をチラッと見て


「いや、



…わかりました」




ゆうじは電話の相手に言って、




通話を終わらせた。





「すんませんっ。



ほんと、すぐ終わるんで、





ちょっと一箇所寄っていいっすか?




すぐ、済むんで



送らせて下さい」





「ああ、うん。



わたしは全然大丈夫だけど」




ゆうじくんに連れてこられたのは




クラブレッドの駐車場。




ここかい。




「すぐ戻るんで!



すんませんっ」




ゆうじくんが駆け下りて行った。




少しぼーっとしたまま、車内から





レッドの建物を見上げる優香。




…いるのかな。




そんなこと考える。




視界の端にコンビニがうつる。



喉かわいたー。



酔い覚ましにお水でも買ってこようかな。




優香は車を降りた。