ピリリリ。



わたしの携帯が鳴った。







知らない番号




「もしもし?」



『あ、優香さんっすか?



おれ、ゆうじっす。




翔輝さん。一緒っすか?』




なんで、わたしの番号知ってんだ



わたしのプライバシー大丈夫かよ



って、ツッコミたいとこはたくさんあるけれど



とりあえず、代わる。



「何で、かけてきてんだよ。



…るせえんだもん。」



翔輝ー。



翔輝の携帯がえらい鳴らないと思ったら



電源切ってたな。



「…おん。…ああ。



…わかったよ。



行くから」



口とがらせて、ハブてたような翔輝の声。




「ん…」



翔輝が、こっちをチラッと見た。



「…わかった。



直ったって言っとく」



あ。窓ガラス?



直ったんだ。



じゃあ、家に



帰らなくちゃね…。





後方から響く排気音。



Uターンする車からは



もう夜景が、消えて




最後に振り返った優香は




キリンのような



そびえ立つ首をのばしたクレーンを



見つめた。






ステアリングを握って



わたしを送る翔輝の腕に



横顔に



「じゃあね」って



バタンって



閉じたドアの音に




置き去りにされる身体が




優香の胸の奥が



もう、寂しくて




ああ、ヤバいのは翔輝じゃなくて



やっぱりあたしじゃん。



って、焦るの。