「きれいだね…」




優香がポツリとつぶやく。




思えば




初めて男の子と付き合ったのは



高校1年生のとき。



けど自然消滅でいつのまにか終わっちゃって




次は3年生のとき。



受験に専念しよう、で終わっちゃって




大学でできた彼氏は



好きで、楽しくて




幸せなときも確かにあったけど




最後、別れた理由は



二股かけられたから。



その後の人は付き合ってると思ってたら




彼氏じゃなかったとか…



最近じゃ不倫だし…。



そりゃあ、大事にしてもらったり



楽しくて幸せだったこともあると思う!



でも、本当にあたしって…



「あたし…」



自分で言うの



悲しくなっちゃうけど。



けっこう



ないがしろにされがちなオンナだよ?



どっちかっていうと



クラスとかでも



目立たないような子だったし。



ほんと、平均の



フツーで。




瞳に反射する



現実味のない



ヒカリが溢れる王国。



何も言わない翔輝。




「あたし、



こんなとこ連れてきてもらったの



初めてかも。




…実際、あんまり



まともに付き合ったことないんだよね。




何か、ちゃんと続かなくて…」



独り言のような優香の言葉。



「あたしってほんと普通で



取り立てて、何もないし。



男運?



それも



ないのかー。なんて




相手の人が悪かったのかな



なんて、思ってたけど。」




ほんとはこんなこと言いたくないのに




言わないのはズルイ気がして




「こういうのって、何度もだと



される側に問題あること



多いんだって…



二股かけられたり



あげく、不倫だしね?」



ポツリポツリと



自嘲気味な優香の声。



翔輝。



何か勘違いしてるんじゃない?



最初の出会い?



何か私じゃない、違うわたしが



翔輝の目には




映ったんじゃないのかな。



だって、なんかそんな




そんなオンナじゃないよ。




どうして翔輝が…







口を開きかけた優香。




翔輝が言った。




「俺に会うためじゃん?」



「え」




優香が翔輝に目をやる。




「過去のことなんて



全部おれに会うためなんじゃん」



オーディオの放つ灯りだけの暗い車内



私だけを見てる翔輝の瞳には

 

目の前に広がるヒカリの



世界はなくて



私だけを映している。




あ、そっか



今はわたしの瞳も翔輝だけを



映しているんだね。





誰もくれなかった言葉を




当たり前みたいに わたしに



くれる



翔輝。



わたし



なんか



ずっと



泣きそうなんだけど。