勝手にソファに座る岸田さん。



優香は震える手で、



リビングのカーテンを開ける。




「優香。元気にしてた?



俺ずっと気になってて。



…本当に、ずっと言おうと思ってたんだよ。



でも、言ったら優香を失いそうで



言えなかった。



嫁とはもうとっくに仲は冷めていて」



まだ、岸田さんの言い訳は続いているけれど



…吐き気がする。



こっちを気遣うふりして、



自分の身勝手な思いぶつけてくる。



まだ、




わたしを



奥さんを




傷つけることができるの?




「もう、ほんとにやめてください。」



自分の顔を覆いたくなる。



「私、後悔してます。



自分の気持ちばっかりで、



奥さんがいることに、気づかなかったことも。



知らなかったとしても、



奥さんを傷つけてたことには



変わりないから…」



あなたがこんな人だって、



気づかなかったことも。



どうして、まだやり直せると思ってるの?



私にも奥さんにも



嘘ついて騙して裏切っていたこと。



どうして



こんなことまだ続けようとするの?



こんな人好きだったなんて。



ずっとずっと



胸の中にあった冷たいしこりは、




自分が傷ついたこともだけど




わたしのせいで




わたしが奥さんを…




傷つけたっていう事実。




「なんでだよ!」



岸田さんが急に



激高したように大声を出した。



その急変ぶりに



優香の、体がビクっと



震えた。



「俺が好きだって言ったじゃないか!」




いやっ。




腕を掴まれる。




やだ、こわい。



「や、やめてください」



「ほんとは優香も俺が好きだろ?



大丈夫だよ。



嫁とはほんとうにもう



終わっているんだから。



口も聞かないんだよ?」



優香は、



男の力で抱きしめようと近づいてくる



岸田さんの腕を振りほどけなくて




やめて。



やめて。



無理やり抱きしめられて




抵抗する優香に、



岸田の顔が近づく。



思い切り横を向く優香。




やだ。



やだ。



やだー。



どうして。



ソファに押し倒されて



手をばたつかせる優香のシャツが



ビリッ。



岸田の手で破かれた。



真っ青になって




それでもやみくもに抵抗する優香に



「何でだよ。



優香。



いいだろ



愛してるんだよ」



嘘。



嘘。



愛なんかじゃない。



これは愛なんかじゃない。



こんなこと、愛なんかじゃない。




誰か。



お願い




誰か、助けて。











翔輝!