ピンポン。
夜、ふいにチャイムが鳴る。
ドアスコープごしに、
やっぱり翔輝。
もー。こっちはもう
パジャマなんですけどー
「どうしたの?」
「別に、
顔見たくなって」
いや、だから
すごい真顔で言うよね。
どういう意味なんだろ。
この人の言葉って。
玄関で言葉の通り私を見てる。
?
ふいに私の腕をとって、
引き寄せようとするから
ドキってなる。
ダメ。
このひと
強引で、
ほんと勝手だからな。
警戒心忘れないように。
身構える優香は
口の前に急いで両手をだして
口を防御。
「何で」
翔輝が不思議そうに聞いてくる。
何でって…
だめでしょ!
どういう関係性なのよ。わたしたち。
翔輝は
ふん。
て、またあの気の抜けたような
よくわからない反応して。
「元気?」
そう聞くから
「?
うん」
あれ
もしかして
心配、してくれたのかな?
あの日ばかみたいに泣いたから。
翔輝のポケットで携帯が鳴る。
それに呼ばれたように
「帰る」
「え、もう?」
今来たのにって思って
思わず言ってしまった。
「車、待たせてるから」
背を向ける翔輝。
なにこのひと。
本当に
私の顔だけ見に来たの?
「あ」
「え?」
その声に
翔輝を見上げた私の腰に
男っぽい腕がまわされて
急激に縮められた距離に
目の前に翔輝の
はしばみがかった色の散る瞳。
押しつけらえたキスに
受け入れさせようと探るキスに
熱くて
発火したみたいに
体温が上がる。
「んっつ」
否応なしのキスのくせに、
優しく唇をなぞるから
抵抗しているのか、
…答えているのか…
自分でわからなくなるのが
こわいよ。
「ハア」
吐息がもれる。
多分、顔を赤らめている
私の髪を
クシャって、撫でて
「じゃあね」
って
してやったり感の顔で、
帰っていく翔輝。
…あんにゃろう。
彼氏か。



