翔輝のカリスマ性だ。
おれが、ケンカで
あんなに派手に負けたのは
後にも先にも、翔輝とやったときだけた。
おれもそれまでは無敗で
多少自信もあったのに
翔輝は
別次元だった。
おれと翔輝とは、
そのケンカした中坊のときからのツレで
おれの親もたいがい
あばずれのクソアマだったけど、
翔輝には
男にハマって出て行った母親と
残された
酒に溺れて暴力を振るう父親しかいなくて
生傷がたえない翔輝は
ガキのクセに無表情で
いつも、達観したような表情してた。
どうせ人生こんなもんだ。
そう言うかのように。
どっちかっていうと
物静かとでも、言うようなヤツなのに。
いや、だからか?
翔輝は言葉が出るより、手が早くて
ケンカが異常に強かった。
自分からケンカ売るタイプじゃないから
もっぱら降りかかる火の粉を
払っていただけだけど。
その強さに、名前の売れかたに
ケンカを売るヤカラが
後をたたなくて
翔輝は
そんな相手を
無表情なまま、顔色ひとつ変えず、
手加減なく、ぶちのめす。
おごるわけでも、いばるでもなく
淡々としたその様子。
その翔輝の圧倒的な姿に
野郎たちは、嫉妬や屈辱感を通り越して
崇拝にも似た憧れを抱くんだ。
今ではそんな翔輝を知らないやつは
この街にそういない。



