打って変わった静寂。
さっきまでの音楽のせいか、
金曜の夜の街の喧騒も小さく感じる。
驚くほど、振動のない車内で、
運転手のゆうじくんと優香は二人。
無言だし。
高級な革張りの匂い。
車窓を流れる景色にぼーっとする。
いや、嘘。
多分、ぼーっとしているのは
さっきのキスのせい。
なんか…
何なの?
あんなキスするなんて
まるで、思いをぶつけるような
あのキスは。
…
…帰したくないって
言われているみたいだった。
胸がギュってなった。
いや、
無いけどね。
あんな…
世界違うし
無いけどね?
ていうか、翔輝っていくつくらい?
このユウジくんも、若く見えるんだけど。
というか…幼く見える
小柄だし。
迷彩のダボダボなスウェット。
サイドに2本並んだレッドのライン。
後前に被ったギャップからは
短めな茶パツがのぞいている。
「ね。
聞いていいかな」
運転しているゆうじくんに
話しかけてみる。
「…何スカ?」
「ゆうじくん?って、いくつ?」
「18っす」
そうっすか。わか。
「え、じゃあ翔輝は?」
「…確か、22っすね」
22か…。
聞いた優香は
バックミラーごしに見える
ユウジの顔色に気づく。
「え。大丈夫?
どうしたの?顔、真っ青だよ」
「何でもないっす」
そっけない返事のユウジ。
乗り出して運転席をみた優香は、
服に血が滲みだしている
ユウジの腕に気づく。
やだ、ケガしてるじゃん!
「病院、病院行こう!」
「は、いや、いいっす。
たいしたもんじゃないんで、
気にしないでください」
「そんなわけ」
「いいっす」
翔輝に似て、きき入れなそうな言い方。
しかもちょっと切れ気味で言われて
「…わかった。
あそこで止めて」
ちょっとむかついた声で、優香が
前方を指さす。
何か言いかけるゆうじに
「私が寄りたいの!」



