翔輝たち数人に囲まれて、
頭を床にこすりつけている。
ドキドキ。
嫌な鼓動が早まる。
見下ろす翔輝の横顔は、
その表情は
やっぱり無表情に近くて、
感情が伺えない。
暴力的なシチュエーションに
そんな状況、
映画ぐらいでしか知らない私は
こわくて
ビビって
そのまま、動けなくて。
目が離せなくて
翔輝がポケットに手を突っ込んだまま、
しゃがむ。
そのひとに何か声を発した。
そのひとがすがるように
翔輝を見上げたときには、
もう翔輝の立ち去る後ろ姿しか
その人からは見えなくなっていて。
スキンヘッドのひとは、
翔輝を追いかけようとするけど、
他のひとに捕まえられて、
フロアから連れ出されていく。
ビートにあわせて
踊るひとたちは、誰も注意をはらわない。
ドキドキ。
ドキドキ。
こわいドキドキ。
逃げなくちゃ。
関わりたくない。
こわい
このひとたち。
は。
止まっていたもんだから、
翔輝がこっちの方にくる!
いやだ、見つかりたくない。
どうしよ、どうしよ。
とっさに今降りてきた
鉄骨の階段の裏側に隠れる。
階段と階段の間から見えちゃうタイプの
階段だけど。
多分、見つかんない。
気づくはずない。
薄暗いし。
大丈夫なはず…!
コン。
そっと振り返ると、
階段の手すりに片手をついて、
翔輝が立っていた。
照明を背に、翔輝の顔は影になっている。
どきん。



