降ろされたのは、一軒のクラブの前。



ゲートは壁も床も



どこもかしこも



真っ赤に統一されていて



建物の割に小さい




その四角い入口の前に



黒服のごつい黒人のひとが立っている。



建物自体は遊園地の



アミューズメント施設のように、



洞窟と思わせるような石膏感。



怪しげ~。



たむろする子たち。



普通だったら絶対入らない。



もうちょっと、若い時でも近づかなかった、



やんちゃな若い子たちの場所。



「ヘイ。ユウジ」



その黒人さんがガムを噛みながら、



こぶしを出す。



並んでいる人たちを横目に



優香はその、ゆうじって呼ばれた男の子を



先頭に、フリーパスで



そのお店に連れられて入っていく。




入ってすぐは薄暗くて、



もう鳴り響いている重低音に



心臓がビリビリする。



中は思ったよりは、暗くないけど



ドッ。って



とにかく音が溢れかえっていて。



思ったより狭い空間に点滅するライト、




フロアより高い位置で音を回すDJに




操られたように、体を揺らすひとたち。




ゆうじたちは、行き交う人ほぼみんなと



挨拶を交わしながら、どんどん進んでいく。



みんな知り合いみたいな?



こわ。



こわ。



こわいー



髪の毛から服装まで、



派手な色をまとう若い子たちに



気後れ感半端ない。



フロアを通り過ぎて



奥の階段を上って



連れていかれたドアには



VIPの文字。



ビップルーム。



革張りの円形に配置された広いソファ。



専用のバー。



横の一面の窓には



クラブの全貌が広がっていて、



フロアで踊るひとたちが下に見える。




さっきまで暴れ狂っていた音が




こもったように小さく聞こえる。



ブラウンに統一された落ち着いた空間。




急に、世界を無理やり切り取られたような



歪な違和感。




耳がそう言ってるみたい。



そのソファの中央で



人に囲まれて座っていたのは




彼だ。



突然の訪問者。



ハシバミ色の瞳の男の子。


やっぱり、あなたが



翔輝?