いつともとは違う厳戒態勢に




クラブレッドのまわりは



人であふれていた。




開けられたドアから



翔輝たちが出てきた。




群衆の目が集まる…。





黒いスーツで厳しい表情の翔輝。





「優香さんっ、勘弁してください」




そう言って、その場から優香を連れ出そうとする




大輝の手を振り切って




優香は前に出る。






「翔輝っ」




優香の声。






「翔輝っ」





ピク。




翔輝の肩が動いたようにみえた。





ゆっくりと振り返る翔輝。




離れているけれど、




確かに翔輝と目があって…





優香は




叫んでいた。





「翔輝っっ。」





「…死んだら、




許さないからっ。




死んだら許さない!」




お願い。



もう、好きじゃなくたっていい




私と翔輝は一緒にいられなくていい




2度と会えないかも、しれない



だけど、



お願い



死なないで



この世界のどこかで



女の子に囲まれていてもいい。




どこかで



生きていて。



私の知らない場所で



世界で



また、あの笑顔で笑っていて。




いつも、いつも




わたしに愛をくれた




翔輝に、わたしがあげられるのは





この言葉だけでしょ?




「勝ちなさいよっ!」




ボロボロ泣きながら




笑ってそう叫んだ優香。




遠目で、翔輝の表情はよくわからなかったけど





きっと、きっと




伝わったよね?





翔輝がクラブレッドに消えていく。







翔輝。




ありがとう。




好きになってくれて





ありがとう。




大好きだよ。






サヨナラ




翔輝。