「はー」



優香は会社を出て



重いため息をついた。


やっと終わったー。


仕事での大きなプロジェクトの問題発生で



この2週間。



きつかったー。



残業続きで、



土、日も出張入って



翔輝と会えずじまい…。



やっぱり一緒に、住んでたら良かったのかな?



仕事でこんなに会えないなんて


思ってなくて。


『越してきたら?』



なんて、当たり前のように言った翔輝。



でも、ねえ?



こんな早く



一緒に住むなんて、ハードル高い。



それに何もかも、翔輝に預けてしまうのは



…こわくて。


 
踏み出せなかった…。






…会いたいな。



今から、



行ってもいいかな



会いに、行ってみようかな?



だって



翔輝に会いたい。









レッドの階段を上がる。




心臓がドキドキして。



翔輝に会える。



2週間のブランクが新鮮味を後押しする



こんな 嬉しくて



ドキドキするなんて。



翔輝もそう思ってくれるかな…。



ドアの前まできた。



優香を知っているらしいひとが



挨拶して、VIPのドアを開けてくれる。



フロアを背にして立っていた翔輝が



ちょうど…



女の子にキスされていた。




グラスを片手に窓枠に手をついた翔輝。




首に手をまわされ、キスされてた。




翔輝の視線がこちらに向きそうで



優香はすぐに踵を返した。




追われるように



優香は逃げる。






「今、優香いなかった?



まぼろし?」



翔輝が言った。



「あほか。



早く追いかけろよ」



那智が言う。



「え。何で?」



あほな翔輝。



「お前、世間ズレしすぎ。



お前からしたら



キスされたなんて



何の意味もないもんでも



ふつう、恋愛では違うんだよ!」



呆れる那智。



何でおれが焦んなくちゃいけねえんだ。



コイツ、まだピンときてないのか?



「お前のオンナ…優香?



が他のやつとキスしてたら?」



その那智の言葉に



バリン。



翔輝の持ってたグラスが砕けた。



「ゆうじ!


優香を確保」



翔輝が言い終わらないうちに



那智がかぶせて言う。



「いや、だから違うだろ!



それじゃ、だめだろ。



てめえで行けよ!」



ドアから消える翔輝。



那智が言う。



「大輝。



やっぱりあいつやめないかも」



「え、マジっすか。何でっすか」



嬉しそうな大輝。



「多分、振られるんじゃね?」