やっぱり、全然、冷静になれてなかった。


『どうしたんだ、凌馬。今、ちょっと会社の人と会ってる』


会社の人?


『そうなんだ…兄さん、今から会えないかな?ちょっと話したいことがあって』


『あ…悪いな、今は...無理かな。今日じゃないとダメか?』


『兄さん、会社の人って、男の人?女の人?』


『えっ?あっ、いや、上司だよ。部長。もう飲んでて、出られないかな』


明らかに慌ててる…


なんで…嘘つくんだよ。


兄さん、ついさっきまで、女性といたじゃないか。


部長ってなんだよ、何なんだよ。


僕は、無性に腹が立った。


『わかった、もういいよ』


かなり冷たい口調になっていた。


『悪いな、凌馬。あっ、そうだ、愛美(まなみ)に言っておくから、相談なら愛美にしてくれないか?あいつ、しっかりしてるから』


何で?