「あ、あの……」
「花、そなたはとても奥ゆかしい女性だ。俺はそなたが気に入った」
気に入った──とは、つまりどういうことだろうかと花が尋ねるより先に、薙光が花の右手をそっと掴んで持ち上げた。
「どうだ、花。俺の嫁にならないか」
「え……なっ、薙光さんの奥さんに、ですか!?」
「ああ、そうだ。俺と結婚してほしい」
花は驚いて目を見張る。
一瞬、何かの聞き間違えかと思ったが、薙光はとても冗談を言っているようには思えないほど真剣だった。
(私が、薙光さんのお嫁さんになるなんて……)
突然の薙光からの求婚に、花だけでなくぽん太に黒桜、そしてちょう助まで目を白黒させて固まっている。
「ここを辞めて、俺のいる美術館へ来れば良い。そこで共に、現世と常世の狭間で永久とわに幸せに暮らそうぞ」
これじゃあまさに、乙女ゲームの最終話の展開だと花は混乱する頭の片隅で考えた。
思わぬ事態に頭の整理が追いつかない。
花は、「え、あの、う、え?」と言葉にならない声を出して、慌てふためくことしかできなかった。



